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社長年頭挨拶

新年明けましておめでとうございます。

ひさしぶりに行動制限が解除された年越しとなり、ふるさとや旅先で新年を迎えられた方も多いのではないでしょうか。こうしてみなさんと新年を迎えられることに、あらためて喜びを感じます。
昨年は、新型コロナウイルスの5類感染症移行による制約の緩和や、部材不足の解消による自動車生産の回復などの明るい兆しがあった一方で、イスラエル紛争や米中経済の停滞、歴史的な円安と物価上昇の継続など、我々を取り巻く環境は引き続き不透明なものとなりました。

年頭にあたり、みなさんへのお願いとともに、私の所信の一端をお伝えします。

一.安全と健康

まず、安全面についてですが、昨年の災害件数はこの四半世紀で最悪の安全成績となってしまいました。安全行動3原則「止める・離れる・足場の確認」を違反したケースが半数あり、重大災害となってもおかしくない事例もありました。各事業場で、安全伝道師活動やリスクアセスメントによる設備の本質改善に取り組んでいますが、緊張感を持続できていない場面があるという事実を深く反省しなければなりません。今年はさらに基本ルールの遵守と危険源からの回避の教育を徹底し、自律的な安全活動ができる「強い職場」を築いていきましょう。
次に、健康面ですが、まずは、新型コロナウイルスやインフルエンザに対する感染予防の徹底をお願いします。また、各事業場が主体となっていた卒煙・禁煙活動について、4月からは「定時時間内禁煙」として全社展開します。自分だけでなく、周囲の健康にも気を配り、ともに生き生きと働ける環境づくりに取り組みましょう。

二.3ヵ年の振り返りと、当社のありたい姿

今年は2023中期経営計画の最終年であり、2026中期経営計画のスタートでもある節目の年です。
2021年からの3年間を振り返ると、新型コロナウイルスの蔓延によるサプライチェーンの分断に始まり、ウクライナ紛争、世界的な物価高騰と歴史的円安、カーボン・ニュートラル社会の実現に向けた自動車の電動化急伸、米中の通商問題顕在化など、当社を取り巻く環境は目まぐるしく変化しました。
そのような事業環境においても、当社は2021年6月に公表した2023中期経営計画で掲げた4つの行動方針「成長分野のビジネス拡大」「事業体質の強靭化」「海外展開拡大」「ESG経営」を推進することで、2023中期目標としていた利益を達成できる水準まで成長することができました。
あらためて、みなさん一人ひとりの取り組みに心から感謝します。

一つ目の「成長分野のビジネス拡大」については、「半導体製造装置向けステンレス鋼」「医療用チタン」「モーター用の特殊配向磁石」「リチウムイオンバッテリー負極材」などの開発・生産体制の整備を進めてきました。また、脱炭素社会の実現に向けた電気炉などの低CO₂先進設備の需要を背景に、エンジニアリング事業も大幅な事業拡大が期待できるようになりました。

二つ目の「事業体質の強靭化」については、「適正マージン確保」「生産性改善」「事業の選択と集中」を進めてきました。高止まりで不透明な資源コストに対し、エネルギー・サーチャージ制度※1の導入やベース値上など、徹底した販売価格の適正化を営業部門のみなさんが進めてくれました。工場・本社部門のみなさんは、コロナ禍を乗り越えて愚直に生産性改善活動を進めてくれました。その成果として、外部環境が変化しても利益確保できる強靭な事業体質に変わってきています。

三つ目の「海外展開拡大」については、コロナ禍での人流停滞もありましたが、海外サプライチェーンの強化を進めるため、中国・北米の既存企業を買収して大同斯蒂尓材料科技(上海)有限公司(DSTS)、Lexington Technologies Company LLC.(LTC)を設立。工具鋼のインド・ベトナム拠点としてDaido D.M.S. India Pvt. Ltd.(DMSI)、DAIDO DMS VIETNAM Co., Ltd.(DMSV)を増強しました。また、大幅な円安環境下を好機として、自由鍛造品を中心とした高合金の海外展開を加速させてきました。エネルギー・航空機関連の需要堅調が継続しており、渋川工場はフル生産で対応してくれています。今後は、効率的な生産をするための最適生産アロケーション※2の見直しも進めていきます。

四つ目の「ESG経営」では、持続的な企業発展のため、CO₂排出量の削減推進をはじめ、超高温炭化炉などの地球資源を有効活用する技術の開発、グループ人権基本方針およびグループ贈収賄防止方針の公表など、新たな取り組みを加速させてきました。このような活動を正しく社会へ伝えるため、統合レポートの発行やESG説明会の開催など、積極的に当社の取り組みも発信してきました。
そして、この3年間の成長を、次の10年の成長に繋げるための大切な3年間が2026中期経営計画であり、その初年度がいよいよ始まります。今年6月の公表に向け議論を進めていますが、2050年のカーボン・ニュートラル社会実現を見据え、2030年までに「こんな大同特殊鋼になっていなくてはならない」という、2030年のありたい姿を描いていきます。社会経済・産業構造の変化を事業好機とし、新たな事業・ビジネスのやり方に積極的に取り組み、持続可能な循環型社会への貢献をめざします。

三.リスクマネジメントとコンプライアンス

我々が対処せねばならないリスクは、自然災害、環境汚染、サイバーテロや情報漏洩などの情報セキュリティ、人的資本の確保、品質マネジメント、ハラスメント等の人権侵害など、多岐にわたります。事業環境の変化について、足元だけではなく将来も見据えながら、顕在化した事案に限らず潜在的なリスクも注視して対処していく必要があります。
リスクマネジメント、コンプライアンスは事業運営の大前提であり、これらにしっかりと対処しなければ、企業としての社会的責任を果たすことができません。そして、大同特殊鋼グループのリスクマネジメント、コンプライアンスの主体者は、私たち一人ひとりであることを強く認識し、「考動」してください。
昨年、当社は広報活動を強化し、約30年ぶりに企業CMを制作しました。当社の経営理念を、「日々になる、特殊な鋼。大同特殊鋼」というメッセージに込めました。
特殊鋼は日々紡がれる暮らしの中で、人々の生活に欠かせない存在です。あらゆる産業の素材として、社会の変化とともにかたちを変え、「人と社会の未来を支え続ける」と私は確信しています。特殊鋼メーカーとしての誇りを胸に、今年も一年ともに進んでいきましょう。

ご健康で ご安全に!

代表取締役社長執行役員 清水 哲也

※1 サーチャージ制度…指標とした資源価格の上昇・下落によるコスト変化分を、製品価格へ反映させる仕組み
※2 アロケーションの見直し…企業の経営資源を最適に配分するための戦略的な選択